そして4月、登校初日のことだった。
いきなり授業でデッサンのテストがあり、
ボクは一度も使ったことのないイーゼルの前に座り、静物画を鉛筆で課題に取り組んだ。
いままでデッサンなんてまともに描いたことはなかったが、
それでも学生時代に美術の授業で描いた作品は幾度も賞を取り、
県庁などに貼られたりもしていたので
割と絵には自信があったボクは、我流ながらそのりんごやバナナなどを、
写実的に模写をして、自分ではまあまあよく描けたと思っていた。
ところがだ、まあなんと周りのやつらの絵のうまいこと!
ボクはあまりのみんなの絵のうまさに愕然として、
それからしばらく鉛筆を持つのが嫌いになってしまった、、、。
どうやらデッサンは、立体感を表現するのに、塗り絵のように色を塗りたくるのではなく、
一本の線を幾度も幾度も重ねながら、色を埋めて陰影を出していくのだと、
そのとき初めて教わった。1つのデッサンを描くのに、十時間とか平気で要するのだ。
そのくらいデッサンについて何も知らなかった。
それが、ボクの中の最初の挫折だった・・。
学校の帰り、ボクはこの歌を聴きながら震えながら、トボトボと寮に帰って行った・・・。