季節の変わり目に訪れたくなる駅がある。笹子もそんな駅のひとつだ。甲斐を郡内と国中に分けてそびえる峠の懐、はやばやと秋冷を連れてきた山霧に昏く沈む街道の家。山峡の彼方に浮かぶのは、さびれた酒造工場の看板か。ゆるいカーブに沿って傾いたホームを景色にそぐわないモダンな特急列車がトンネルへ吸い込まれていった。
2021/09/3 山梨県 大月市 笹子町 黒野田 JR笹子駅