みなさん、おつかれさまです。昭和探偵事務所、所長のナガサワです。
このコーナーでは、1960年代後半~70年代に青少年時代を過ごした、
おじさんたちのハートをわしづかみにする、
昭和的なモノ・場所・遺物等を無秩序かつナンセンスに紹介してまいります。
今回のテーマはこちら!どん!
1988年に放送されたNHK大河ドラマ「武田信玄」放送記念JR駅の入場券であります。
どこの駅に入場できる(できた)のか?
説明が面倒なので一足飛びに写真を見てもらいます、どん!
これでも何だか分かりませんなぁ・・・ 要は、このように蛇腹折になっておりまして、
中4面には武田軍VS上杉軍が激突した、第四次川中島合戦の江戸浮世絵が展開し、
その両ウイングにJR大月駅からJR小淵沢駅までの入場きっぷが配置されているのであります。
各駅の入場きっぷには駅周辺の名所・旧跡などが印刷されております。
たとえば、写真上のJR小淵沢駅の場合、武田軍が信濃方面へ最短距離で行軍するために切り拓いた
「棒道跡」が印刷されています。なぜ、こんなものが当事務所にあるのかと申しますと、
所長の私が武田ファンであるからに他なりません。
ファンである理由は、このコーナーと直接関係ないので後日、何かの機会に演説するとして、
NHK大河ドラマ「武田信玄」が放送されたのは1988年のこと。
1988年=昭和63年、つまり、この大河ドラマは、1989年(平成元)年1月8日、
64年間続いた昭和が終わり、元号が平成に改められる前年にO.Aを全うした、
ピュア昭和最後の大河ドラマなのです。
思い起こせば、当時は紙の「きっぷ」や「定期券」が当たり前の時代でありまして、
改札では、きっぷ切りの駅員がハサミをチャカチャカ鳴らしておりました。
私たちの日常に深く溶け込んでいたきっぷ。
だからこそ「○○記念きっぷ」のような企画きっぷは観光プロモーションツールとして、
大きな効果を発揮したようです。その成功例が北海道の「愛国から幸福ゆき」ブームでした。
それまで年間7枚程度しか売れなかった愛国駅 – 幸福駅間の切符が、1974年には300万枚、
4年間で1000万枚も売れたとのこと。幸福駅は、縁起のよい駅名の入場券・乗車券を求める
ブームの嚆矢となった駅であり、
全国のローカル線や鉄道会社にとって、記念乗車・入場券で収益を補うという、
サイドビジネスの原点になりました。
で、話を大河ドラマ放送記念きっぷに戻して、上の写真にご注目!
このJR中央本線の「初鹿野」という駅は、現在「甲斐大和」と呼ばれております。
初鹿野・・・奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ秋は悲しき・・・
抒情的で美しい駅名なのに、変えてしまったなんて残念だなぁ~
と思うのは、私だけでしょうか・・・事実、甲斐大和(旧初鹿野)駅は
笹子峠を越えたところにある、山峡のひなびた駅で、
武田氏が織田軍の甲州征伐により滅びた、武田氏終焉の地でもあるのです。
きっぷに印刷されているのは、武田家最後の当主、武田勝頼と家族・家臣ら
殉死者の菩提を弔う景徳院の山門です。
初鹿野駅の開業当時、駅の周辺には初鹿野村がありました。初鹿野村は1941年(昭和16年)に
付近の村々と合併し、大和村となりましたが駅名はそのまま初鹿野であり続けました。
そして52年後の1993年(平成5年)、大和村の名を冠した甲斐大和駅に改称されたそうです。
これで駅名と村の名前が一致した格好になったのですが、それもつかの間、
2005年(平成17年)、大和村は付近の市町と合併して甲州市となり、
同村は消滅してしまいました。消滅=滅亡・・・武田家終焉の地には、
その地の歴史と美しい風景を物語る駅名さえ消えて行く、
悲しい宿命があるのでしょうか・・・
で、NHK大河ドラマ「武田信玄」のO.A.開始に合わせて発売された、
当事務所の宝物「大河ドラマストーリーブック」であります。
菅原文太、岸田今日子、児玉清、平幹二郎、宍戸錠、本郷功次郎、佐藤慶、宇津井健、
中村勘九郎、井上孝雄、藤木悠、音楽担当の山本直純・・・
キャストには、すでに鬼籍に入った俳優も多く、
嫌が応でも時の流れを身に染みて感じてしまいます。
人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか
時の流れに抗えず、消滅に突き進んでいった
武田氏、昭和、駅名、村名、きっぷ、そして俳優たち・・・
まったく、サヨナラだけが人生であります。
せめて消えるときは、幸福な心持ちでありたいなと・・・
で、最後に、どん!
「大河ドラマストーリーブック」掲載、米穀協会の広告であります。
この頃、日本のコメの消費量も消滅に向かっていたのか、大人気だった夕方アイドル、
おにゃん子クラブ、会員No.18の城之内早苗をキャラクターに起用し、
「朝からしっかりコメを食え!」と訴えております。
ちなみに城之内さんは昨年、32年ぶりとなるニューアルバム「早苗歌」を発売し、
消滅の気配さえなく、第一線で生き生きと活躍されているそうです。
いかがでしたか?昭和探偵事務所は、これからも不定期に調査報告を行ってまいります。
生きているうちが花なのよ、今度はどんな昭和へ行こうかな・・・
次回も御照覧のほど、よろしくお願い申し上げます。