昭和探偵事務所-File-05 川崎市農業技術支援センター~見えすぎちゃって困るの~ん♪
2021.02.7

みなさまこんにちは。梅は咲いたか~桜はまだかいな~昭和探偵事務所・所長のナガサワです。おかげさまで調査報告も早5回目を迎えました。File-05をお届けするにあたり、これまでの調査報告を振り返ってつらつら思いを巡らしていたところ、何の脈絡もなく、弊所が求めている”昭和”とは何か?という根本的なテーマに行き当たりました。そこでFile-01~04までを所員全員で再検証した結果、弊所が求めているのは「そこにあったか!昭和」ではないだろうか、という結論に達した次第です。

 

止む気配すらない昭和ブーム。そこで注目される物品・記録の多くは、その希少さゆえ、お金に換算できる昭和のような気がいたします。国や自治体の文化財、貴重な音・映像・ドキュメント、店舗・ネットで売買されるホビーやアイテムなど、いずれも経済的価値を持っております。一方、弊所が求めているのは、昭和時代の遺物にもかかわらず、特に不便を感じることもなく、作り変える必要性も見当たらず、その予算もないから、当分このままでいいや…という、なげやりな評価により、行きがかり上現存している昭和のように思えます。今後、調査対象となる事物にすべて当てはまるとは申しませんが、そんな昭和を求めて精進していこうかなと。で、今回の「そこにあったか!昭和」はこちら!どん!

川崎市農業技術支援センター(神奈川県川崎市多摩区菅仙谷3丁目17-1)であります。このセンター、よみうりランドに隣接する川崎市の施設と申し上げれば、同地域周辺に土地勘のある方は所在地をイメージできるのではないでしょうか。

敷地内は上記地図のようになっております。同センターは、昭和34年に「園芸技術普及農場山地果樹試験地」として設置され、昭和47年にフルーツパークに名称変更し、一般に開放されるようになりました。平成20年に、組織改編にともない現在の名称に改め、市内農業者へ向けた農産物生産技術の向上支援、市民の農業に対する理解・参加を促進するための事業等を行っている、とのこと。

京浜工業地帯のイメージが強い川崎市ですが、多摩川に沿って南北に長く伸びる川崎市の大半は住宅地と丘陵地帯で占められており、農業も盛んに行われております。多摩川梨や禅寺丸柿などの特産品も多く、のどかな里山風景をそこ此処に見ることができます。「140万市民が”農”のあるライフスタイルをめざす」をスローガンに掲げる川崎市。同センターは、その活動拠点でもあるのです。

さっそく構内に入ってみましょう。守衛不在の守衛舎で氏名・人数を書き、来場数カウンターを押します。カウンターは県内在住者・県外在住者・市内在住者に分かれていました。

約2万平方メートルの敷地内に梨、桃、柿などの果樹園や熱帯果樹温室があります。眺めのよい展望室には昔の農具が展示されているとのこと。隣の敷地はよみうりランドでありまして、ジェットコースターの爆発的な走行音と若者の黄色い歓声が盛大に聞こえて参ります。

で、今回の目玉はこちら!どん!「休息・展望室~自由にお入りください」であります。どうです?この古い図書館のようなアプローチ。まずは一階からのぞいてみましょう。

期待を裏切らない昭和の空気感。おそらく建設当時から張り替えていない石の床とタイルが冷たく光っております。痛い注射を打たれる病院みたいで休息する気分にはなれません。粉を吹いたようなアルミの扉もかなりの年代物。切っ先するどい「事務所」の書体にシビレてしまうのは私だけでしょうか…

二階はルーフテラスになっております。懐かしいタイルの壁画には、仲良きことは美しきかな、の願いを込めたのか。このようなタイルを使った壁画は、いまでも幼稚園や小学校で見ることができます。その多くは昭和時代に作られたものではないでしょうか。このアングルから見ると展望室というより、小学校の体育館のようにも見えますね。

振り返ると公団住宅ごしに東側のパノラマを楽しめます。この日は生憎の曇り空。晴天ともなれば、新宿の高層ビルや筑波の山並みも見えるそうです。

で、中に入って目に飛び込んできたのがこれ。屋内に枯山水を作ってしまう発想って、日本人ならではの芸当ですよね。それを天井から丸いライトでシンボリックに照らすあたりが憎い。この手のワザは2005年3月に全店閉店した喫茶「談話室滝沢」でも顕著に見られ、心落ちつく昭和的な癒しを演出しております。ちなみに談話室滝沢・新宿東口店では、枯山水どころか人口の池泉や小川がフロアを縦横に流れ、太鼓橋がかかり、錦鯉が泳ぐという極端な和的演出の中、ポマードとタバコの匂いが充満しておりました。ああ懐かしや…

で、階段を上がりますと寂れたロープウェイの駅のごとき展望室が現れました。巨大なガラス窓ごしによみうりランドの園内が一望できます。雲の合間から射し込んできた西日のおかげで、室内はそれなりに温かい。照明もBGMもありません。聞こえてくるのは遊園地の歓声だけ。それが返って静けさと落ちつきをもたらしています。近所のおばちゃんたちが冬の陽射しを浴びながらおしゃべりしていました。

 

窓の周囲には昔の農機具が展示されておりまして、中央のショーケースには、川崎市の農業や生産品の歴史を学べる資料などを見ることができます。資料はすべて色あせてセピア調になっておりますが、そのカビ臭い状態もまた味わいなのであります。さらに、柱を巻くように昔懐かしい水飲みの蛇口がそのまま残っており、手を洗うことも可能。今のご時世ありがたいですな。ついでに冷凍ミカンの赤い網に入れて蛇口に縛りつけたミツワ石鹸も用意してほしいものです。

で、今回、最も気になったのがこちら!どん!

四面ある窓の上部にぶら下がっている「方面案内板」であります。これ、東京タワーとか奥多摩とか富士山とか肉眼で見える方面は良いのですが、中には「三浦半島」「川崎臨港」など、丘陵と樹々に遮られてまったく見えない方面もあります。同センターが建設された昭和34年当時は見えたのでしょうか?まあ”方面”ってことなので、見える見えないに関係なく「見えすぎちゃって困るのぉ~♪イヤァ~ン!!! Byマスプロアンテナ」みたいな、見えすぎるほど見えちゃうから来てね!という、昭和的デフォルメと遊び心なのかもしれません。ご興味のある方は入場無料ですし、ぜひ、どこまで見えちゃうのか見に来てくださいませ。

楽しんでいただけましたでしょうか?昭和探偵事務所は、今後も毎月一回、身もフタもない調査報告を継続して参ります。コロナ禍も春の雪解けのごとく、一日も早く収束して欲しいものです。梅は咲いたか♪~桜はまだかいな♪~次回はどんな昭和へ行こうかな…