長渕とボク #42〜  どれだけ人を愛しても
2021.06.18

最近、アルツハイマーの新薬が話題になっているが、ボクも人ごとではない話題だ。

 

僕のおじさん(親父の弟)の奥さん、 つまり、おばさんだが、アルツハイマーを患い、結局最後は施設で亡くなった。 このおばさん夫婦は、僕にとって第二の親と言える存在だった。

本当にいろいろお世話になり、小さい頃からずっと可愛がってもらっていた。

思春期に入り、親父と喧嘩したときなどには、いつもおばさんの家に転がり込んで 親父の愚痴や文句をこ言っては、そのまま家に寝泊まりしていたり、 おじさんが工場を営んでいたので、高校生の頃にはそこでアルバイトもさせてもらったりしていた。

 

その後、就職してからも、たびたびお土産を持っては2人の顔を見に行っていた。 この夫婦は本当に仲が良くて、僕には理想の夫婦像だった。

おばさんの様子がおかしくなったのは、夫であるおじさんが亡くなった頃からだった。

いつも僕が遊びに行くと、心から喜んでくれて、本当に本当に可愛がってもらっていた。

おじさんが、ガンで亡くなってからは、おばさんは会うたび、いつも「寂しいよ〜寂しいよ〜」と言っていた。 それからは帰省したときには、おじさんの墓参りがてら、なるべくおばさんのお線香をあげがてら、 顔を見に行くと、いつも小さい頃から馴染みの愛称で呼んでくれては歓迎してくれたていた。

 

おばさんの異変に気づいたのは、会話中に同じことを何度も繰り返し話したり、同じ質問をするようになったときだった。 それからは、おばさんに会いに行くたび、家の中には、いろんな張り紙が貼ってあって、火を消す、戸締りをする、など、 いわゆるアルツハイマーの人のためのもので、おばさんの病名もハッキリと、いとこ(おばさんの娘)から聞いた。

できるだけ、現状維持をするための薬を飲んでいたようだが、 たまに帰省がてら、顔を見に行くと、おばさんが「あたし、バカになっちゃったよ〜!」と、言うので 「そんなことないよ〜」と笑いながらかけあいをしていたが、完全にその症状が進んでいることを実感し、 年々物忘れがひどくなっていくのが目に見えて分かった。

 

そのうち、そんなおばさんの顔を見るのがだんだんつらくなり、 ボクも家に行くのが少しご無沙汰気味になっていった。 それから数年後、おばさんが体調を崩し、病院に入院したと母から聞いたので、いとこに連絡を取り、 夏休みにを待って、お見舞いがてら久しぶりに顔を見に行くことにした。 そして、ドキドキしながらも病室に入り、「おばさんきたよ〜久しぶり〜!」と、いつものように明るく声をかけると、 蚊の鳴くような、か細い声だったが、僕の名前をはっきりと呼んで「ニコッ」、と笑ってくれた! ちゃんと僕の名前を覚えていてくれたのだ!  

しかも、あのお馴染みの愛称でちゃんと呼んでくれてとても嬉しかった。

 

ただ、さすがに栄養を取れていないため身体も細くなっていて、もともと痩せ型だったおばさんの身体はさらに細くなっていて、 名前を読んでくれた後は、口をポカンとあけたままベッドに仰向けになったまま、どこを見るでもなく、 ただ天井をずっと見つめているようだった。 ボクはそれを見て泣きそうになったが、グッと堪えて「またくるね〜!」と言って、 病院を出たのが、結局おばさんの顔を見た最後になってしまった。 それから半年〜1年が過ぎた頃だったか、、、いとこから連絡があり、おばさんが先日亡くなった、と・・・。

 

ボクにそのことを伝えると、コロナでもこっちに来ちゃうかもしれないからお知らせするのを控えようということになっていたらしく、 お葬式など済ましてから数日後の連絡になって申し訳ないと、そのいとこが泣きながら報告してくれた。 言葉がもう出なかった・・・。 いまだに、コロナでお葬式にもいけず、いまだにお線香も上げに行けていない。

 

おばさん、いままで本当にお世話になりました。

天国でおじさんとまた2人で仲良くやってください。

コロナが落ち着いたら、必ずお墓参りに行くからね〜!

 

そんな、大好きなだったおばさんに、この歌を捧ぐ。

この世からアルツハイマーがなくなることを切に願って。