あなたの実家のタンスの中身は 何処へ行くのか Vol. 3
2020.12.24

アートディレクター NOGAMI EMIKO 

 

Vol.3 「その地味なキモノ」の正体

結城紬とか大島紬とか本塩沢とかナントカ上布とかナントカ染とかは気絶するほど美しく高額だ。もし実家のタンスにこういった類がありそうな方は、仕立て直すなり、譲るなり、業者に買い取ってもらうなり何とか活かして欲しいと思う。

問題なのは活かすとか処分とかに行きつく前の「これって良いヤツ?ダメなヤツ?」コレがもう判断つかずで悩ましい・・・アナタも私も。厄介な事に元々キモノ好きでも無い限り、一見暗く地味でそもそもの価値が分かりにくいモノが実家のタンスには溢れていたりするから。

「正絹反物」
しっとりと重い正絹に可憐な刺繍が美しくタンスの横で思わず眺めてしまう。こういうモノはなんとなく「少しは良さげなモノ」とわかりやすい。勿論キモノとして仕立て生かされればベストなので結局反物のまま他の方に譲った。

 

 

どちらも地味であまり目立たずこういうのが怪しげで判断に困る。(上)交織と呼ばれる混ぜ素材・正体不明 (下)高額品の代名詞「大島紬」もっと複雑な柄が多いが、こんな可愛めの柄もあったりする。多分購入価格は数十倍の違いがあっただろうけど、今は案外大島も引き取りの値がつかない。タンスにはこんなのがごちゃ混ぜで断捨離の決意を迷わせる。

 

 

誰か目利きの力を借りてお高い良いモノは残すか譲るか判断出来ても「業者では値が付かなかった」とか「誰も引取り手がいない」地味なキキモノはそろそろ傷みの限界に近づいている。こうしてアナタも判断に困りそのまま放置すれば、先々の誰かもやっぱり永遠に悩む事になる。こういう引き取り手に困る地味なキモノ達を「今の私たちに違和感のないモノ」に作り変える事で生かせるんじゃないか。

 

Reduce  Reuse  Remake  Recycle

 

着物のリメイク品は既に巷にあふれていて、服や小物にカタチを変え、とてもセンス良く洒落たモノも沢山あって仕立師さんや縫製工場や裁縫上手の個人が腕をふるっている。でも、何だか少し身近に感じられないのが勿体ない。ステイホームで家時間が増えた今、部屋でパソコンに向かう時はジャージ以外でもいいんじゃないか。子供やママだって遠くのじぃじのリメイク品で公園とかも楽しいんじゃないか。シンプルでベーシックなUNIQLOやMUJIなどと違和感なくコーディネートできるんじゃないか。それが「私たちの実家のタンス問題」をちょっとだけマシにできないかな。「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」がマズイ事はみんなが感じはじめている。洋服も好きで着物も好きで結局ハンパな断捨離に心折れる自分が、半強制的に実家の小さな縫製現場を継ぐことになったのだから何か出来るかもしれない。

 

「朽ちて捨てられる布を減らすために」

今の私たちの生活着作り始めました。まだまだ試行錯誤中ですが、身近な人たちのタンスの中身や傷んで着られなかったキモノ達からまずは!

お披露目できる日を楽しみに。

 

(左)正絹の醍醐味、漆黒のチュニックドレス(中)捨てるには惜しい凝ったハギレのクッションカバーやバック (右)雪国の代々続く農家のタンスから出てきた100年モノの男物から作ったバルーンスカートは素材感が今風で驚く

メンズパンツやキッズも試作中